「西門さんは素敵な人です。経営者としても」
恐らく、人間としても。その言葉に父の眼鏡の奥の瞳が柔らかく揺れる。
「お母さんも、元々は西門くんと結婚したかったんではないのだろうか。
私が無理やり結婚してしまったばかりに、お母さんには苦労ばかりかけた。
私は情けない男だ。西城家からお母さんを守ってあげる事が出来ずにいた。会長からも、姉さんたちからも…」
彼なりに後悔をしていた日々があった。
幼き頃、親戚の集まりで母はいつも末端の席で背を丸めて小さくなっていた。
思えば、不憫な女だった。弱く悲しい人だった。
「お前は、私のようにはならないでくれ。どうか美麗さんを幸せにしてやってくれ」
「あなたに言われなくても美麗は俺が守ります」
その言葉に、父はまた優しい瞳を揺らした。
きっと俺も美麗の両親が美麗を愛すように、自分の両親から愛されていた筈だ。
少しの行き違いがあっただけで、ボタンは幾らでも掛け直す事が出来る。きちんと向き合っていく事に遅いって事はないだろう。
そういう気持ちを教えてくれたのも、紛れもなく美麗自身だった。
だが、美麗。君は強くなくたって良い。君に心配をかけぬよう、俺が強くなる。だから君はいつだって笑って、幸せでいて欲しい。勿論、それは俺の傍らで。



