【完】淡い雪 キミと僕と


「山岡さんッ」

「どうしたの?ランチは楽しかった?」

「えぇ。ランチはとっても楽しくて…ってそーじゃなくって、今さっき山岡さんに会いにきた方がいらっしゃって…」

「わたしに…?」

いや、わたしは受付嬢なのだ。

この会社の誰かに会いに来た来訪者を迎えるのがわたしの仕事の筈なのだが?

わざわざわたしを訪問する企業の人間なんていないだろう。不思議に思っていると、千田ちゃんが「西城さんって言ってました」と驚きの名を口にした。

西城さん?!

会社には来るなと口を酸っぱくして言ってある筈。それを何故、なんの用で…。連絡の1本も寄こさず勝手な事を…。まさか千田ちゃんに余計な事を言ってないだろうか、あの男は。

けれど、次に千田ちゃんは驚くような言葉を口にした。

「あの、年配の方でした」

「え…?」

「70代くらいかと思います。けれどとてもしっかりとした方で…。雰囲気で分かるんですけど、多分どこかの企業のお偉いさんだとは思います…。
白髪頭で眼鏡をかけていて…でもおじいさんって感じではなくて、ちょっと怖かったです」

ぶるりと寒気が背中を走る。

それはきっと、恐らく…いや絶対西城さんのおじい様に違いない。70代に見えたと言うのならば、確実。お父さんではないだろう。

いくら何でも50代の彼の父が70代に見える事もないだろう。千田ちゃんだって受付で様々な人間を見てきている子だ。間違いない、わたしを訪ねてきたのは西城さんのおじい様だ。