【完】淡い雪 キミと僕と


「西城さんは、とても温かい人だった。お母さんの事も君の事もとても大切にしていてね。
実は、昔雪絵さんを好きだったのは、私の方でね。縁談もまとまりそうだったんだよ。
けれど雪絵さんは西城さんと出会って恋に落ちて、結婚したんだよ」

「え?!」

それも初耳だった。

やはり、父と母は政略結婚ではなかった。…あんなに愛情のない夫婦だと思っていたのに…。

そして母も、西門さんの事をとても好きだったと言っていた筈なのに。

もしかしたら、俺は何か思い違いをしていたのかもしれない…。目の前で優しく微笑むこの人が、到底嘘をついてるようには思えなかったから。

「私の記憶の中で、君たち家族が幸せそうに笑っている姿しか残っていない。
では、そろそろ失礼します。今日は大輝くんに会えて、顔を見れて良かった。
どうぞ美麗さんもごゆっくりしていって下さい。客室露天も良いですが、大浴場の方もライトアップされていて、とても気に入ってくれると思います」

そう言い残し、西門さんは部屋を出て行った。

彼が出て行った後、俺はたまらず美麗を抱きしめていた。

本当の所は、父と母しか知らない。 俺は自分をずっと消したかった。西城大輝ではなく、違う誰かになって、どこかへ逃げたかった。

その要因があるとするのならば、両親に愛されてこなかった事だった。望まれていない命だとばかり思っていた。

…けれど、西門さんの話だけ聞けば………。

「西城…さん?」

俺の胸の中、少しだけ不安そうに美麗が見上げる。