「久しぶりですね。大輝さん。いやあ、大きくなって、見違えてしまった」
「西門さんですよね、あの当時支配人だった。あ、取り合えず上がって下さい」
そう言うと、彼は失礼しますと言って、美麗を見てまたあの優し気な笑顔を浮かべ「こんにちは」とゆっくり挨拶をした。
「西城さんから連絡を貰った時は驚きました。
それに大輝くんがこんなに大きくなって、まさかこんな可愛らしいお嬢さんをお連れになって夢かぐらまでお越しくださるとは…」
「あ、山岡美麗と申します。素敵な旅館ですね」
「ありがとうございます。夢かぐらの常務の西門です。
大輝くん、こちらの女性は…」
ちらりと西門さんの視線がこちらへ移る。
「僕の恋人で、結婚を考えている女性です」
その言葉に彼の眼差しはもっと優しくなった。
「本当に時は流れるのが早いね。あんなに小さかった大輝くんに、こんな素敵な婚約者さんがいるとはね。
いやあ、懐かしい。西城グループから見たらこんな小さな旅館で驚きでしょう」
「いえ、そんな……わたしはこういう雰囲気好きです。あたたかくて…。それに従業員さんも素敵な方たちばかりですね」
「そう言って貰えるととても嬉しいです。私の経営方針として、お客様に寄り添った接客を心がけているので、働いてくれる従業員も私にしてみたら誇りですから」
従業員をきちんと見ているから言える言葉だ。
西城グループ程大きな企業になってしまえば、ひとりひとりを見てあげる、とはとても言えなかった。



