フロントのまだ若い男性が部屋まで案内してくれたが、爽やかな彼もまた案内してくれるまで旅館内の設備について話してくれ、東京からいらっしゃったんですよね?等と世間話も間に挟んでいた。
とても、従業員とお客さんの距離が近い、温かみのある旅館だった。ホテルは大きくなればなるほど、対応も事務的になる。
だけど俺は、こういった雰囲気は嫌いじゃない。どこか温かいというか、人情味があると言うか。
ごゆっくりどうぞ、と一通り部屋の説明をされ、通された客室はとても広い和室だった。
支配人が特別に用意してくれたらしい。外に客室露天風呂が完備されていた。
そこからは、真っ白な雪がかかる大雪山が見上げられる。なんて素敵な所だろう。美麗も嬉しそうにはしゃぎ、写真を撮っていた。
「そうだ、美麗」
「ん?どうしたの?ねぇすっごく素敵ね。やっぱり冬だから当たり前に寒いけど…
でもやっぱり北海道ってロマンチックで素敵」
「これを」
テーブルの片隅に置かれた美麗の携帯は予想通り液晶にひび割れが入っていた。頭に血がのぼっていたとはいえ、申し訳なさすぎる。
新しい携帯を差し出すと、彼女は驚き目を丸くした。
「え?!最新機種じゃない!」
「携帯の事はすまない…。どうかしていたと思う。
新しい携帯を契約してきた。これを使ってくれ」
「え、いいよいいよ。修理に出そうと思ってた所だし。それに少し液晶が割れたくらいで使えるよ」
「いいから受け取ってくれ…」



