ボヌールも篠崎リゾートの系列なんて、聞いていない。
無表情だったかと思えば、にこりと上品な笑みを浮かべて「こんにちは、よく会いますね」と彼女は涼しい声で言った。
佐久間さんは、わたしと菫さんを交互に見て、不思議そうな顔をする。会いたくなかったのに…。しかも状況が非常に悪い。
「何だよ、菫、美麗ちゃんと知り合いなの?」
「えぇ、この間お会いしましたよね。
まさか潤と一緒なんてびっくりした所だけど」
比べたくないけれど、比べてしまう。
何て完璧な人だろう。都内で数店もお店を任されているなんて、お嬢様でありながら仕事も出来る。
容姿だって完璧だ。スタイルも良い。シンプルな服装だからこそ、そのスタイルの良さが際立つのだ。
ゴムで1本に髪をくくっているだけなのに、その黒髪だって艶やかで華やかさがある。
それはもう、生まれ持ったオーラとしか言いようがないのだ。
「何かお邪魔しちゃったみたいで申し訳ないです」
「いえ。そんな……」
「デザートはサービスさせて頂きますね。ノエールも美味しいけれど、このお店も中々ですよ」
「…ありがとうございます」
「では、ごゆっくり。
潤も、また連絡するわね。
あ、そうそう美麗さん」
「え?」
顔を上げたら、菫さんの大きな黒い瞳が揺れる。
余裕のある女性だった。それに比べ、目をきょろきょろと動かし、挙動不審な動き見せるわたしは、余りにも情けない。



