【完】淡い雪 キミと僕と


そう言って、佐久間さんはメニューを見せてきた。

何とか、理解は示してくれたようだ。しかしこの人はとても良い。西城さんがいなかったら好きになっていたかもしれない。

強引でもなく人を尊重してくれて、押しつけがましくもなく良い人だ。

「苺のパフェ!美味しそう」

そんな話をしている時だった。

コンコン、と個室のドアがノックされ、失礼しますと鈴のような涼しい音が室内に響いた。

目の前にいた、佐久間さんの頬が少し緩む。

「お食事中の所、申し訳ありません。
あッ、潤。何よ、来てるならば連絡をしてよ。従業員から潤が来ているって聞いて、何?デート?」

背中越しに伝わってくる綺麗な声色は、どこかで聞いた事があった。

「おーごめんごめん。連絡しようとしたんだけど、忙しいかなぁって思って。
今日はお気に入りの女の子とデートだよん。ねぇ~お勧めのデザート教えてよ~。つーかサービスしろよな」

恐る恐る振り返る。

まさか、とは思った。でもどこかで聞いた事のあるような声だとは思ったんだ。

振り返ったら、確信した。女優さんのような美しい容姿に、上品な立ち振る舞い。白いシャツに黒のパンツといったシンプルなスタイルだったけれど、深く頭を下げて顔を上げた瞬間、彼女も一瞬無表情になり、ジーっとこちらを一瞥した。

何も知らない佐久間さんだけが喋り続けた。

「美麗ちゃん~、こいつここのオーナーの娘でこのお店を任されてるんだ。
俺の幼馴染の篠崎菫って言うの」