「キャリーか…。ではヴィトンにでも行こう」
「あんたさ、馬鹿なの?そんな高いの買える訳ないじゃん。
わたしの給料どれだけか知ってるの?」
「だから俺が買うと言っている!好きな物何でも買ってやるといつも言ってるだろう…?欲深い女の癖に遠慮などするな…」
’欲深い’といったキーワードがよっぽど気に入らなかったらしく、美麗はまた眉をひそめた。
ぷいっと顔を背け、速足でエスカレーターに駆け上がってしまう。…何が気に食わないと言うのだ。
追いかけて背中を軽く小突くと、やっぱり不機嫌な顔をして一段上からこちらを睨みつける。
「それじゃあアンタはパパみたいじゃないッ。そりゃーわたしだって欲しい物は沢山あるけど、特別な日でもないのにアンタから何かを貰うつもりなんかない。
それに欲深いって失礼ね。確かに昔はそうだったかもしれないけど…わたしは、アンタや雪がいてくれるだけで今の生活には満足してるの。だから自分に必要な物は自分のお金で買うの!」
そしてまた直ぐにふいっと顔を背けてしまった。
言い方はキツかったが、何やら可愛らしい事を言ってくれたようだ。
そうなってしまえば俺の出番なんてないんだ。
彼女はその後何のブランドでもない1泊用のキャリーケースを買った。そしてえらく満足そうだった。
…欲深い女の本性は、とても清らかで慎ましい。文句は言えないから、クリスマスだけは豪勢にしてやろうと決めた。
ビックリして大きな目ん玉が零れ落ちてしまう程の、驚くプレゼントをしてやろう。そう、心に誓った。



