【完】淡い雪 キミと僕と


座り心地の良い皮のソファーは何故か居心地が悪かった。テーブルの上の車のキーを手に持ち、家を出る事にした。

先に美麗の家に行って、雪だけでも連れて来よう。

それからあいつが同僚とのランチが終わった後迎えに行けばいい。このどこか薄ら寒い空間も、雪が居ればきっと少しは暖かくなる筈だ。

「みゃあ、みゃあ、みゃあーん!」

美麗のマンションに着くと、ゲージに入れられていた雪が直ぐに人の気配に気づき、ゲージのプラスチックを爪で研ぐ。切なそうな鳴き声を上げながら。

それにしても大きくなったと、毎日毎日思わされる。

甲高いピアノのような鳴き声にも、心なしか力強さがついてきた気がする。けれど甘えん坊な性格はちっとも変りやしない。

ゲージから出してやると、ゴロゴロと喉を鳴らしながら、足元で何度も顔をすり寄せる。美麗はちっとも俺が雪を迎えに来るとは予想していなかったのだろう。

ソファーに投げ出された服の数々が、片付けられずに積み上げられる。

やっぱりガサツな女だ。化粧品なんて、テーブルの上に出しっぱなしで、誰かに荒らされた後みたいになっている。

多少のガサツさは目を瞑る。

あいつの事だから俺の家に来たら、その余りの綺麗さにビビるだろう。どちらかと言えば綺麗好きだと思う。物が余りないと言われればそれまでだが、用意したまま家を出る女に比べれば、まだマシだろう。

俺が綺麗好きで、君は少しガサツ。ならば掃除は俺がすれば良いとする。

…ってまた何を付き合った後の事ばかり考えているのだろう。そんな保証どこにもあった訳でもないのに。