どの口が言うか。
俺は昔、お前が好きだったんだぞ。それをこっ酷く振って、ちっとも相手になんかしてくれやしなかった。
それどころかあろう事か井上晴人なんてどこにでもいるような平凡な男とくっつきやがって。
「そういえばさーハルが言ってたんだけどー」
「井上晴人がどうしたってんだよッ!」
「…何怒ってんの?!こっわー…。
何かねぇ、この間朝会社の前で山岡さんに会ったんだってぇ!」
「はぁ?!」
またあいつは…。節操もなく会社で美麗にまで唾をつけてんのか。大人しい顔をして…ムカつく男だ。
「だから…何怒ってんの…?
それでねー山岡さんが男の人に朝車で送って貰ってたみたいなの」
「何だと?!」
自分が思っているよりずっと大きな声が出ていたみたいで、一瞬シンと静まり返る。
アンタの方がうっさいじゃんかよぉ、と琴子がぶつくさ文句を言う。
美麗が男の車で会社まで送って貰っていただと?!いつの間に!
「しかもかなりの高級車だったらしいよぉ~」
あ。それは俺の事か。つい最近あいつの会社まで車で送ってやった所だ。全く、焦るような事を言うな。
「それでハルが山岡さんに彼氏?って聞いたら、全然彼氏なんかじゃない。友達でもないって言ってたらし……」
ぶつ。
そこで電話は途切れた。
勿論勝手に切ったのは、この俺。
きっと今頃機械音が流れる携帯に向い、琴子は怒鳴り散らしているに違いない。



