【完】淡い雪 キミと僕と


「取り合えず君はとても不器用なタイプだから、食材は俺が切る」

「不器用で悪かったわね」

しかしながらそれは本当の事。

この間西城さんが料理をしているのを見て酷く驚いた。

とても器用に動く手なのだ。この人は大概の事をこなしてしまう人なんじゃないかしら?

レシピ通りに事を進めているだけだ、と彼は言うけれど、使った事のないという包丁も実に器用に扱う。彼曰く、料理番組がテレビで流れていてそれを何度か観ていた事がある、そうだ。見ただけでこなす事はとても難しいのに。そう考えればこの人はやっぱり器用なのだと思う。

鮮やかに玉ねぎを切っていく彼の横顔をボンヤリと見つめながら、横で調味料の用意をしていた。

しかし横顔が綺麗な人だ。

それに、野菜を切る手も大きくて指もとても長い。…とても綺麗だ。その指先で、彼はわたしの色々な所に触れてくれた。

「ん?何を見ている?」

「み、見てなんかいないわよッ」

わたしってば何を考えているの。これじゃあ盛りのついた雌猫みたいじゃない。

愚かだわ。

またその指で、触れて欲しいなんて考えている事。あなただけは絶対に知られたくない。わたしがそんな女だと知ったら、きっと幻滅する。

一緒にいれるのは嬉しい。それがたとえ雪だけの繋がりであったとしても。けれど一緒に居ればいる程欲張りになってしまう。

…そうなるのがとても怖い。