「え、何?ちょ…西城さん?」

「美麗…」

悲しい顔をしていた。

いつも笑ったら泣き顔に見えるような女が、今にも泣き出しそうな顔をする。

彼女の身体はとても温かく柔らかかった。お風呂上がりのシャンプーの香りがする。

力いっぱい彼女を抱きしめると、俺の腕の中で手足をばたつかせて、顔を上げた。

「ねぇ、本当にどうしたの?何かあった…?」

彼女の両頬を掴み、気がつけばキスを落としていた。

ばたつかせていた手足が、ぴたりと動きを止めた。

どうしてあんな事をしてしまったのか、そういう対象として扱っていい女ではない事は分かっていた。

あの時の俺はどうかしていたんだ。色々と言い訳を並べたとしても、どうしてもあの時は他の温もりでは駄目で、君を求めた。

「美麗…助けてくれ…」

ソファーに彼女の身体を押し倒し、服に手をかけた。

その時の美麗がどんな顔をしていたかは、今となっちゃ覚えていない。

けれど、抵抗する様子もなく、雨に打たれボロボロになったみすぼらしい俺を、その日美麗は受け止めてくれた。