【完】淡い雪 キミと僕と



「料理云々というよりかは個室の室内の雰囲気がとても良くてな。
篠崎社長はきっと日本の伝統的な物が好きなのだな。掛け軸ひとつとって見ても、あれは一級品だ。
菫さんのお父さんは大したもんだよ。1代で築き上げたんだからな」

「へぇ、まあわたしにはそんなお店一生縁がないんでしょうけれど」

「まあな。今度一緒に行くか?」

「は?」

余りにもさらりと自然に言うもんだから、一瞬耳を疑ってしまう。

何、こいつ。わたしを誘っているというの?

「何だ?外食もたまにはいいかなと思ってな。雪も大きくなってきたもんだ。
そう思えば俺はアンタにきちんとしたお礼をしていない」

「お礼なんて…雪の生活費を出してるのもあなただし、光熱費だってたまに払ってくれてるじゃない。
それに靴も…貰ったし。大体わたしと食事なんて、婚約者のお嬢様だっていい気はしないんじゃないの?」

「菫さんはとても良いお嬢さんだよ」

あーそーですかー。そりゃー良かったでーすーね。

とても良いお嬢さんだし、生まれや育ちは違うし?わたしと食事したって何も誤解は与える事はないものね。

わたし達は、ただの友人?いや、友人と言っていいのか微妙な関係ですし、元々は赤の他人な訳ですからね。

しかしながらこの僻みっぽい性格には、自分ながらうんざりしてしまう。お嬢様と自分を比べたって仕方がない所じゃないか。それならば、自分の持っているもの、今ある自分を大事にしてあげればいいのに。

それなのに、他人と自分を比べてしまう。どうして人は、誰かと自分を比べずにはいられないんだろう。少しは見栄っ張りも直り、マシにはなっていたつもりだが、まだまだだ。