あの恋を思い出に出来たのは、雪のお陰だ。
そして悔しいけれど―
「何よ。何だって言うのよ?!何か言いたい事があるのならば、口に出して言いなさいよ!卑怯者ッ」
目の前には、目をひん剥き怒る美麗の顔。その横で子豚の美麗ママがふわーっとした笑みを浮かべる。
ソファーには、ガーガーいびきをかいて眠る美麗パパがいて、そのお腹の上で、雪が幸せそうに寝息を立てる。余談だが、雪は俺よりも美麗パパのお腹が好き…っぽい…。パパは本当にショックだよ、雪…。
そして卑怯者、の意味はいまいち分からない。
ただ俺の箸に挟まれているのは…これは一体何なんだろうか。黒い焦げの塊のようにも…見えるが?それに首を傾げているだけなのに…何故そうまで彼女は怒っているというのだろうか。
「本当にムカつく男ね?!言いたい事があるのなら、ハッキリと言えばいいじゃないのッ。その目よ、目で何か言ってくるのは止めなさいよ!」
だから、何にそんなにキャンキャンと吠えていると言うのだろう。
これは、きっと生姜焼きという食べ物なのだと思う。だって焦げ焦げの肉の隣に綺麗に茶色くテカリを見せる肉も並んでいるのだから。
口にいれたら、少しだけ焦げ臭い。しかし味はまあまあなのだ。
「美麗ちゃんに手伝って貰ったらねぇ。普段料理なんてしないもんだから」
「作ったのか?」
訝し気な目で見つめると、美麗はぷいっと顔を横に向けた。耳まで真っ赤にして。どうやら照れているらしい。
「勘違いしないでよ?!アンタの為に作った訳じゃないから!
わたしだって少しくらい料理を作れるようにならなきゃ、未来の旦那さんが可哀想だと思って。
つまりは…アンタは毒見って事!」



