「あたしが馬鹿でハルを怒らせるから?」
本当に、君は馬鹿だ。大馬鹿だろう。しかし、井上晴人、こういった女にはハッキリと気持ちを伝えないと、伝わらないぞ?
俺は意地悪だから、お前にはきっと言わない。彼女にもヒントしか落とさない。自分たちで気づかないと意味がない。
「ちげぇよ。
ああいった男は誰にでも優しいから、そういう男が怒りの感情で自分が見えなくなってしまう時は
大切な物を守りたい時か、大切な人が間違ってる時は道を正したいか、のどちらかだ。
俺は井上晴人じゃないから、あいつの本音の本音なんかは分かんねぇ。
けれど、あいつが琴子を大切に想う気持ちだけは、痛い程伝わる」
ねぇだから、君には泣き顔よりも笑った顔の方がよく似合う。それが例え俺の隣じゃなくても、どこにいたとしても君には笑っていて欲しい。
無邪気で屈託のない、その豪快な笑顔を、こんなにも好きになったのだから。
こんな捻くれた自分が、誰かの幸せを願い、こんなにも誰かを好きになれた事を、今は幸せに思う。
それからの事は知らん。
最後に会った日に、琴子は再び井上晴人に会いに行く、と言っていた。
願う事と言えば、この世界のどこかで君が笑っていてくれる事だけだったから、井上晴人との恋物語は正直どうでも良い。どっちに転ぼうと、興味はない。
でもきっと…君は今もどこかで笑っている。
曇り空まで吹き飛ばしてしまうくらいの、豪快な笑顔の隣には、きっとあの小生意気な猫と、どこか冴えない顔をした、ぼんやりとした男がいるだろう。
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