【完】淡い雪 キミと僕と


力では俺に敵わなくなった母は、それから俺を殴りはしなかった。その代わり段々塞ぎこむ事が多くなっていって
今じゃ、精神病院で入退院を繰り返すようになった。

ガキの頃からずっと疑問に思っていた事が腑に落ちたのはいつだったか。きっと母親は心の病だったのだ、と。かといって、同情も出来やしないけど。そういった哀れみの感情さえ欠落してしまったのは、誰のせいだったのか。



社会人になってから、仕事の繋がりや友人とは港区で遊ぶ事が多くなった。

そこにはどこから湧き上がって、どこへ消えていくのか分からない得体のしれない女共がうようよいた。
日本で1番財政界の人間。芸能人。著名人が集う大人の社交場と言うのだろうか。とにかくお金持ちが集まる街に、そしてそれに群がる女は無数にいる。



そんな時だった。
君に出会ったのは――



エリートと世間から呼ばれる人間。金や地位と名声、そういった物を全て兼ね備えた人間だけが集められるパーティーや飲みの場。

選ばれしものしか歓迎されない。馬鹿馬鹿しいとは思うが、権力というのはいつの時代も振りかざすためにあるのだろう。

そしてその場に呼ばれる女も、身分に違いはあれど、容姿の美しい女ばかりだった。
どうやらここで心の美しさというものは、全く持って使い物になりやしないらしい。

男は自分の持っているお金で、女は生まれ持った美しさ。それだけが重宝される世界。