【完】淡い雪 キミと僕と


数日後、会長室に呼ばれた。

何の話かと思いきや、軽く仕事の話をした後、菫さんはいかがかな?と下世話な質問を投げかけた。

全く何を聞き出したのやら。彼女からは連絡先を交換して、たまにメッセージのやり取りをしていた。

「可愛らしい人だと思いますけど…」

「そうかそうか、お前も菫さんを気に入ったか。いやね、篠崎くんから、菫さんがお前を大層気に入ってると聞いてな」

いや、気に入ったなんて一言も言っちゃいないが、この人は元々人の話を聞かないタイプなのだ。独裁者らしいタイプだ。人に有無など言わせる気は更々ないのだ。

「それは、とても光栄な事だと思っています」

「とても可愛らしい良い子だと私も思う。
それに篠崎さんと縁を結んでおく事は、これからの西城グループにとっても悪い話ではない。それにお前ももう良い歳だ。そういった話を考えても遅くはないだろう」

だからそういった話ってどういった話だよ。回りくどいな。

それに俺はまだ27歳だ。そこまで将来を真剣に考えている訳ではない。

けれど祖父が言いたいのはこういう事だろう。

篠崎リゾートとは上手く付き合え。篠崎の令嬢がお前を気に入っているのならば、事をうまく運べ、と言った感じか。

政略結婚など珍しい話ではない。

大きい企業になればなるほど、今もなおその風潮が色濃く残る。結局は自分の気持ちなどは無視なのだ。

父もまた、そのひとりだった。

母は、とあるホテルの一人娘で、父とは政略結婚だ。そのホテルは現在西城グループの傘下にある。事業を大きくしていくには仕方がない事なのだ。

父が母を愛し、母もまた父を愛していたかは、訊いた事がないから、知らない。そんな事知りたくもないし、結果があの様だ。