【完】淡い雪 キミと僕と


それは俺と美麗が同じ想いを抱えているから、という事だったんだろうか。全く強いんだか、弱いのだか分からない女だ。

とにもかくにも3月中旬。例年よりも少し早い開花宣言だった。

春が来た。なんて人々は浮かれ気分だったのだろうが、薄紅色の木の花の下で、ほんの少し憂鬱な気分。

俺だってそこまで強い訳じゃない。

井上晴人と琴子が仲良くしている姿をわざわざ見に行くほどドMでもない。それでも美麗の誘いに乗って、のこのこと奴らの前に現れるのは、ただ単純に、琴子に会いたかっただけだ。

午前中に一旦会社に行ってきたからスーツ姿の俺は若干浮いていた。皆身軽な格好をしていたのだから。そしてそんな俺の姿を見るなり、琴子は「何で?!」と声を荒げた。全く失礼な女だ。まるでこの世の物ではない物を見るような顔をしやがって。



こんなガサツな女であっても、井上晴人の前で俺に会うのは気まずいときてる。

まぁ最後までとはいかなかったけれど、途中まで男女の関係があった間柄だ。気まずいのは仕方がない話だろう。

けれど美麗に誘われたんだ。

それを正直に伝えると、もっと面白くなさそうな顔をした。

咲き乱れる薄紅の花の中で、俺と琴子はちょっとした喧嘩になった。喧嘩というよりは言い合いに近かったのだが、そしてそのやり取りを見て、美麗がクスクスと笑いだした。

諸悪の根源は美麗なのだから、責めるなら彼女の方だろう?

「こんにちは、山岡美麗です。
飲み会で1回会ってるんですけど、お話しをちゃんとするのは初めてですよね。
今日は誘ってくれてありがとうございます」

最もらしい、良い女風を気取り作り笑顔で挨拶をした美麗に対し、不愛想に、そして不機嫌そうに「高橋琴子でぃす」と名前だけを名乗った。