【完】淡い雪 キミと僕と


桜の咲く頃だった。庶民というものは数週間街に咲き乱れる日本の薄紅の花を何故にここまで愛せると言うのだろう。

外国では、何故日本人は美しい薔薇の花よりも、すぐに散ってしまう桜を愛するか疑問に持つという話を聞いた事がある。

限りある時間、一斉に咲き乱れ、パッと散り行くさまに、儚さを感じるからだという。日本人という国民性が儚い物が好きな生き物であるのだろう。馬鹿馬鹿しい。

俺にとって庶民と混じり、お花見をするなど夢にも思わなかった。わざわざ河川敷まで出向いて、桜を口実にどんちゃん騒ぎをしたいだけじゃないか。

下から花を見上げるより、上から見下ろす方がずっとずっと好きだった。



それでも4月―
何故か俺は、琴子と井上晴人。そしてその友人カップル。美麗とお花見をする羽目になった。
誘ったのは美麗の方だった。

『お花見しませんか?』

『何でわざわざ花など見に行かないといけないのだ』

『知り合いの家の近くの河川敷に綺麗に桜の咲くスポットがあるのです。それはそれは綺麗なようなのですよ』

『人の話は聞いているか?何故俺が君と楽しく桜なんて見ないといけないんだ?』

『これは別にデートのお誘いではありませんから、誤解のないように。
来たくないのなら、来なくて結構です。井上さんに誘われただけなので、友人の方もいらっしゃるそうですが
琴子さんも来るみたいですが?
そうですよね、西城さんのような方が、庶民とお花見なんてしないですよね。分かりました。』

『そうか、では行く事にする』

『うわぁ~……あからさまで引くわ~…』

『何がだ?たまには庶民と花見ってのも悪くない』

『あらそーですか。それはそれは。
まぁ正直助かるわ。誘われたはいいけど、井上さんと琴子さんが一緒にいる所を実際に見てしまったら、落ち込んでしまいそうなんだもの
わざわざ自分から傷つきにいくようなものじゃない。あなたがいれば心強い気がします…。ほんの少しだけ』