【完】淡い雪 キミと僕と


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どうして再び出会ってしまったというのだろうか。

もしも琴子の一緒に暮らしていた男が井上晴人でなかったら、再び美麗と繋がる事はなかっただろう。

そもそも井上晴人と美麗が同じ会社だという偶然すら出来すぎていた。



井上晴人は、どこにでもいそうな普通のサラリーマンだった。

女よりよっぽどふんわりとした雰囲気を持っていて、気が弱そうで、背だけはやたらと高くて、でもよくよく見ると顔立ちは整っていて、大きな、二重瞼が特徴的な男だった。

そして随分腰の低そうな男に見えた。自分に自信がないというのか?

琴子は男と暮らしていると言った。

しかしそこには大輝の思っているような関係は何ひとつない、と。あくまで同居人である事を強調していた。友達だろうが、他人だろうがそんな事はどうだっていい。一緒に暮らしているのが異性だというのが問題なのだ。

強引にも琴子と井上晴人の暮らすマンションに入り込む事に成功した。


美麗のマンションも大概だが、ここも人が暮らすところなのか、と。

タワーマンションの最上階に暮らし、幼き頃から大きな屋敷に住んでいた俺にはちょっとした衝撃だった。こんなせまっ苦しい汚い場所で、お前たち正気か?と。

感覚が狂っていたのは俺の方で、他の人間の方が正常だったのだろうけど。人というのはこんな小さな家でも暮らしていけるものなのだな、と思ったもんだ。

特に変わった所のない、2LDKのマンションは小綺麗に片付けられていて、リビングに無駄な物は少なかった。

右側と左側にそれぞれの部屋があって、どちらの扉も開けっ広げのままになっていた。それが一緒に暮らす生々しさを感じさせた。

リビングに設置されたキャットタワーは猫にとっては大層なもんで、天井まで届くタワーの中心に小さな小屋まで完備している。目だけ光らせて、あの生意気そうな琴音猫が息を潜ませていた。