【完】淡い雪 キミと僕と


「色々な話をしたなぁーって…思い出したんだ。
サッカーをしている姿を優しく見守ってくれたり、手をひいて、青空に浮かぶ飛行機を一緒に見たりして
俺な、こう見えて将来の夢が沢山あるような子供だったんだ。たくさん、たくさん、胸の中に抱えきれないくらいの夢があって
特にサッカーは好きだったからサッカー選手にもなりたかったし、飛行機も小さな頃から大好きだったから、空をかけるパイロットにもなりたかった。
でも、そんなの口には出すのが恥ずかしくて、おばあちゃんにしか言えなかったんだ。だって他の人に言ったら変な顔されるだろ?俺は将来を決められた家柄に生まれてしまったから」


サッカー選手、パイロット。

小さな子供ならば、誰でも口にしたくなるような夢さえも、この人は語るのを許されなかったんだ。

そんな小さな頃から西城グループという重荷を背負って、周りの大人の目を気にして生きてきたなんて、思えば思う程切ない。

否定される事はあっても、肯定される事は決してなかった。

淡い、けれども切なる子供の願い。

わたしはずっと彼が恵まれている人だと思い続けていた。欲しい物は何でも手に入れて、自分の思い通りに事を運び、傲慢に笑う、嫌な奴だと思っていた。

でも違うわよね。

それこそ、勘違い。わたしは知っているもの。この人が優しく人を抱きしめて、いつだって言葉を選んでくれて、そして小さな命を大切にする。

冷たそうに見せて優しい。全く持って分かりずらいというのにどこか思いやりがある。

そういう人間だという事はとっくに知っていた。