「晴人くんはもうわたしの気持ちには気づいていると思うのではっきりと言うんだけど
わたしは、何とも思ってない人と、休日を過ごしたりしません。
ましてやクリスマスを一緒に過ごそうとも思わない。
わたしはあなたと過ごす時間の中で、少しずつあなたを好きになっていった…んだと…思います。
わたしは、あなたが好きです」
彼の視線が徐々に下へと落ちて行って、困ったように眉を下げる。
どこまでも誠実なあなたは、わたしのあげたプレゼントをこちらへゆっくりと返す。
そして、一言だけ「ごめんなさい」と呟き、続けた。
「俺は………きっと山岡さん…が思っているような男ではないと思います…
お洒落なお店も知らないし、あなたが望むような人間ではなくて…
そうだと言うのにプライドが高くて、自分の体裁ばかり気にしている…小さな男です」
彼が何を言っているのか、理解出来なかった。
その言葉の意味をかみ砕こうとしていけばいくほど混乱していき、指先が熱くびりびりと痺れて、鈍い痛みが胸全体を覆った。
顔を上げた井上さんは、ハッとした表情になってただただ茫然とわたしの方を見つめる。
そんな彼の表情が上手く見えなくなっていって視界がぼやけている事にやっと気づけた。意識など全くしていなかったのに、瞳には溢れんばかりの涙が溜まっていた。
「それは……わたしの事を何とも思っていないという事…なのでしょう…か?」
「はい。山岡さんの事は可愛いと思うし、全然嫌いでもないし、むしろ魅力的な女性だとは思います。
俺には勿体ないくらいの…
でも…俺は恋愛としてこれから…山岡さんとどうなるとかは…考えられないです…」
「じゃあ…じゃあ…何でクリスマスに一緒に過ごすなんて…」



