ディナーに彼が選んだお店は、何回目かのデートで何気なく会話の中でわたしが来たいなぁと呟いていた海と夜景を一望できるレストランだった。
そんな何気ない会話を覚えていてくれた事が、何よりも嬉しかった。クリスマス時期の予約が取りずらい時期に、彼が一生懸命わたしの為に用意してくれた、そう思うだけで心がほっこりと温かくなった。
最高のシチュエーションは揃った。後は彼の告白を待つだけ。そう思っていた自分は、どれだけ思い上がっていたというのだろう。
彼の様子がおかしいのには、薄々気づいていた。見て見ぬ振りをして、思い過ごしだと自分に言い聞かせていた。
けれどレストランに入ってからの彼はますます上の空で、心の中の僅かな不安を煽っていく。
それをかき消すように、彼の為に用意したクリスマスプレゼントを渡した。彼の事を考えて、彼に似合うだろうなぁって一生懸命選んだマフラー。
そしてそれを彼が心から喜んでくれたら、きっと嬉しい気持ちになる。見返りを求めない、正真正銘純粋なプレゼントだった。
けれど…彼はそれを受け取るのを一瞬躊躇して、困惑の表情を浮かべた。それでも直ぐに笑顔を取り繕い「ありがとう」とお礼を言った後に、気が合うねと春の花のような淡いピンクのマフラーを手渡した。
思い過ごし、思い過ごし。呪文のように頭で何度も唱えた。
彼の様子がおかしいと感じるのは、全部思い過ごし
共にクリスマスを過ごし、プレゼントまで渡し合って、ただの友達なんて、無理のある話だ。きっと、同じ気持ちでいてくれているに違いない。
けれども無理をして笑って、何かを言いたげに口を半開きにし、視線を左右に動かす彼に、不安は募っていくばかりだった。
思い過ごしであれば、良かったのに。たまらず、自分の想いを口にしてしまった。



