【完】淡い雪 キミと僕と


井上さんと出会って、井上さんが素直に自分の両親を尊敬すると言って、家族の話を目を輝かせて子供の顔に戻ってするから

そして、わたしのパパとママを素敵な人だなんて力説するから、その時のあなたはとても透き通った心を持っていて、だからわたしは、井上さんと一生を過ごせるのならば、お金持ちになんかならなくとも、優雅な生活が約束されていまいが構わないと思い始めていた。

ごくごく平凡な暮らしをふたりで積み重ねていって、あなたの帰りをきちんと待って、必要とあれば、スーパーのパートのおばちゃんと呼ばれても構わない。

ママのように太っても、あなたがわたしを愛してくれるのならばそれは幸せだ。そう思い始めていた矢先だったのに――



青天の霹靂とは正にこのような状況に使うのが正しい言葉なのではないだろうか。

井上さんはわたしの見たいと言ったイルミネーションに連れて行ってくれて、クリスマスソングが流れる中、道行く人が皆幸せそうに見えた。

何をするでもなく、クリスマスカラーに色付けされた街をブラブラと歩いて、綺麗ともロマンチックとも言えない東京の薄汚れた海添いを肩を並べ歩き、お洒落なカフェに入って美味しい珈琲を飲んで、とりとめのない話をする。

1ミリの狂いもない、完璧なクリスマスを井上さんは演出してくれた。

でも、完璧でなくとも構わなかった。井上さんと過ごす時間であれば、美しいイルミネーションでなくともお洒落なカフェでなくとも、そこは完璧な世界であって、あなたの滑稽な程の純粋さが見えれば見えるほど、大切な物はお金なんかではないと思わせてくれたから。