「断ってんじゃん。もったいなー……
何?!もっと良い人いるの?」
頭の中で、井上さんの顔が浮かんだ。
「うん、いるよ…」
「え~?!もしかして西城さんとかー?!
西城さんいいよねぇ~。西城グループの一人息子だし、あそこまでのお金持ちはいないってぇ。
しかもルックスもいいときたらねぇ」
「いやいや西城さんはない。
何かお互い気が合わないみたいだし、全然連絡なんて取ってないよ」
「え~?!そうなの~。もったいなぁ~…」
相手にされなかったなんて口が裂けても言えなかった。そんな無様な自分を他人に晒すなど、プライドの高いわたしは口に出来ない。
好みじゃないんだ、と告白もせずに振られてしまったあの日。
続きさえもなかった恋物語。でもそれで良かった。結局は誰に出会っても、わたしは井上さんを好きになっていた気がするから。
自分から誘わなくとも男は幾らでも寄ってきた。
食事に行こう。どこどこのサパーがとても雰囲気が良いんだ。あそこのラウンジから見える夜景がとても綺麗でね。数々の巧みな言葉を使い、男たちはわたしに素敵な夢を見せてくれたわ。
けれど、井上さん以上に美しい情景をイメージさせてくれる人はいなかった。
わたしから誘うなど恥。でも、彼の前ではなりふりさえ構ってられない自分がいて、何度か食事を重ねた後、自ら休日のデートに誘った。わたしはまだ勘違いしていた。
井上さんもきっと同じ気持ちでいてくれる、ただ彼には勇気がないだけで、自分からわたしを誘えないだけなのだ、と。
どこまでも傲慢な女だと自分では思う。



