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『美麗ちゃんが行きたがってた会員制のバー、予約取れたんだ。
金曜日どうですか?』
『ごめんなさい。その日は用事があって』
『クリスマスの予定は決まった?』
『その日は用事があって…』
名前と顔が一致しない。港区で培ってきた人脈。誘われるものならば、過去のわたしはいつだって夜の街へ繰り出していった。
けれど、井上さんに出会って、好きだと認識してからは断り続けた。
会員制のバーにいって何になるという。それは私の力ではない。
クリスマスにホテルの最上階のロマンチストなレストランで綺麗な夜景を見つめながら、美味しい料理を食べる?プレゼントなんか貰っちゃって?
今まで楽しくて嬉しかった出来事の全て、途端に色褪せて見えてしまうのだ。
わたしの中で’愛’など下らない感情だった。
でも、わたしは愛を知ってしまったのだ。
愛はとても儚く、そして優しくもあった。それは人を安心させてくれて、ここにいてもいいよと言ってくれるようで、あなたが必要だとも感じさせてくれる。
両親以外にそんな曇りなき愛をくれる人がこの世にいるとは夢にも思わなかった。
「なぁ~に?美麗。誰とライン?」
「あー…何か、会社経営の人だよ…あと、こっちはお医者さんだったかなぁ…」
「いいじゃんいいじゃん!ほんっと美麗はモテモテなんだからぁ」
莉子と久しぶりにお茶をしていて、彼女はご自慢の胸をぐいっとこちらへ出して、携帯を凝視した。



