「いや、可愛いとか可愛くないの問題ではないんだがな。
この柄を持つ猫の性格は、甘えん坊で穏やかな性格が多い、だとよ。」
「あら、そう。確かに雪は人懐っこくて甘えん坊だものね、当たっているわ」
「そーかそーか、お前そうだったのか。
お前はすごいぞッ。こんなに可愛い猫はそうそういない。お前は選ばれた特別な猫だッ」
西城さんは誇らしげに雪を抱え、高い高いをした。雪も雪でとても嬉しそうで、応えるように「ミャーミャー」西城さんに何か話を掛けている。
それを無理やり奪って、雪の背中の匂いを嗅ぐ。う~、良い匂い。雪はとても良い匂いがする。獣臭いと言ってしまえばそれはそれで仕方がない事なのかもしれないけど、色々な匂いが混じり合っている。
雪の匂い、わたしは好き。大好き。すごく良い匂い。
「返せって!」
「うっさい。雪は選ばれた猫でも特別な猫でもなくていいの。雪が雪なら、それで良いの。
雪は生きているだけで尊いんだから」
そう言ったら出しかけた手を引っ込めて、西城さんは少しだけ寂しそうな顔をしたんだ。
見過ごしてばかりいた、彼の様々な表情。どうして見過ごしたままでいれたのだろうか。時折見せる、寂しそうな切ない表情。
そんな時の彼は、とてもとても小さな男の子のようにも見える。何かを言いたげで、愁いを帯びていて、考え込むようでもあって、いつもは鋭い視線を少しだけ落とし、とても寂しそうな目をするのだ。
「雪は幸せ者だな。そんな事を言ってくれる人がいて」
「あなたにだって、いるでしょう…」
「アンタの言葉は、いつだって過去を思い出させる。だから、アンタといるのは嫌なんだ」
抱き上げた雪は柔らかく温かく、まだ頼りなかったが、それでも精一杯生きようとした。
西城さんの話に耳を傾けながら、雪とあの、琴音猫を重ねていた。
わたしにとっての雪は、きっと井上さんにとっての、琴音だ。



