「取り合えず、状態が良くなるまで入院させましょう。…それでも助かる保証は…
いや…僕たちの判断ミスだったんです、里親に出すタイミングが悪すぎた。もう少し病院に置いておくべきだったのです。子猫の状態はいつ悪くなってもおかしくはない」
「入院でもなんでも良いです。どうかどうか…雪を助けて…何でもしますから…
お願いします…」
かなり驚いた。
そりゃー数日過ごしただけでも、この俺にも情が沸いた。勿論雪を助けたいとは思っている。
けれど、猫なんて嫌いだと言っていた彼女がここまで泣きはらし、そして必死に助けを乞うなんて。
港区で遊んでいた頃の美麗とはえらい違いで、顔も髪もぐちゃぐちゃに振り乱して、泣いても泣いても止まりそうにない涙は頬を何度だって伝う。
「先生、こういうのはどうですか?
一旦、雪ちゃんを家の養子として迎えて、そうしたら何かあっても安心だし、ここは動物病院だから適切な治療も出来る」
「あぁ、成るほど。そうですね、一旦家で預かるというのはどうでしょうか?
うちは隣り合って自宅がある動物病院ですし、24時間見ている事も出来ます。
それに5匹の猫もいますし、雪ちゃんを面倒見てくれるような子がいるかもしれません」
奥さんが提案して、獣医が頷く。
俺には、いまいち言ってる意味が分からなかった。
養子?
それは、雪が先生の家に引き取られるという事なのだろうか。それは、もう俺たちが雪を飼えない、という事なのだろうか。



