お人好しの獣医が小難しそうな顔をした。
しかしえらく優しそうな顔をしている男だ。40代前半といったところだろうか、雪を引き取った際は余り顔をじっくり見なかったが、あの時もありがとうありがとうと何度もこちらにお礼の言葉を向けた。
小さな動物病院だったが、ネットの口コミを改めて見ると中々評判が良い。この間はいなかった女性が心配そうに雪を見つめている。おそらく、獣医の奥さんだと思われる。
夫婦で切り盛りをしているとネットで書かれていたのを思い出した。この奥さんがまた人の好さそうな人間だった。
一通り雪の診察をした獣医は「あんまり状態はよろしくありません」と言った。
その言葉を聞いた美麗の大きな瞳には涙がいっぱい。
今にも嗚咽を上げて、その場に崩れ落ちて行ってしまいそうだった。
そんな美麗に「大丈夫…?」と奥さんが声を掛けた。ぽろぽろと大粒の涙が頬へ零れ落ちる。
「雪ちゃんは、元々ここに連れて来られた時から栄養状態が兄弟の中では1番良くはなかった。産まれた時から未熟児でしたし
きっと肺炎を起こしてしまっているのだと思います。このまま放っておけば……」
そこまで獣医が言ったら、隣にいた美麗の喉元からひゅっと音がして、獣医と奥さん交互に見つめ馬鹿でかい声を出しやがった。
「助けてくださいッ…
助けてくださいッ!」
おいおい、お前は世界の中心で愛を叫ぶかよ。いや、今叫んでるのは愛ではなく、助けを求めているのだが。
必死に頭を下げる美麗に奥さんは寄り添い、優しく背中をさする。



