琴子は俺に何も望んではこなかった。
払うお金は、デリヘルで一緒に過ごす時間の料金、のみ。
美味しい食べ物を与えれば犬っころのように尻尾を振って喜んで、それだというのに仕事以外のお金は一切受け取らなかった。
何かを買ってやると言っても首を縦には振らなかったし、ブラックカードをちらつかせても決してなびかなかった。
貯金を頑張ってるのだと言い、この俺を、’お金で何とでもなると思ってる男だ、最低だ、’とからかって笑った。
こんな女はそうそういない。どこを探したとしても
女という生き物は俺の金だったり、西城大輝というステータスだったり、形のある物を欲しがった。
けれど、琴子だけは何も欲しがらなかった。ただただ時間内でだけ自分の時間を売った。
ここはデリヘルで、時間内であるのならば、本番行為以外は彼女を自分の好きなようにする事は出来た。
でもそういう事じゃなくて、そういう問題ではなくて、ただの溜まっている欲望を吐き出すのならば、簡単なのだ。それでも俺は彼女に指一本触れる事さえ躊躇した。
綺麗な女だと思ったんだ――
それは、彼女を形作る容姿とかそういった単純な物だけではなくて、真っ直ぐで、尖った所のひとつも見当たらない、豪快に笑う、大した美人ではない女を綺麗だと思うなんて、どうかしている。
側にいるだけで、心が満たされていくような空気感を作ってくれる。
彼女だけが西城グループの社長令息、西城大輝ではなく、ただの男である西城大輝…人間として見てくれていた気がした。



