「西城さん!!西城さん!!
雪が…
雪が―――」

電話口の美麗はえらく混乱していた。

そして、支離滅裂な言葉を口にしていく。

「雪の呼吸が荒くて…!」

「ずっと起きないのッ!」

「雪、死ぬの?!死んじゃうの?!」


そうとうパニックになっているらしく、埒が明かない。

状況がよく分からない。冷静に説明を、と言っても無理そうだ。電話口の彼女の呼吸の方が、ずっと荒い。

どうしよう、どうしよう、と何度も繰り返すから、取り合えず直ぐに行くと言って電話を切り、猛スピードで美麗の家まで車を走らせた。


’死ぬの?!死んじゃうの?!’

美麗のさっきの言葉に、過去の自分を重ねていた。

いや、今はそんな事を考えている暇はない。

家に着くころには、彼女と同じくらいは息が上がっていた。

ソファーの上に置かれた段ボールを美麗は凝視していて、その瞳が真っ赤に染まりあがっていた。

「おいッ、雪は?!」

「西城さんッ…どうしよう……あたしのせい…あたしのせいなの…
雪、昨日までは元気にしていたの、ミルクも飲んだし…でも今朝起きたら眠ってるなぁと思って起こさないであげたの…
少し経って見て見たら、雪が苦しそうにしているのッ
ねぇ!雪死んじゃうの?!そんなの嫌だよぉ!!」