【完】淡い雪 キミと僕と


彼と会う回数を重ねていくたびに、港区でチヤホヤしてくれる男たちがどれだけ空っぽだったのかを知る。

そしてそんな男にチヤホヤされ喜んでいた自分はもっと空っぽだったという事を。

自分でも気づかぬうちに、彼に惹かれていく自分がいた。



「受付の山岡ってどーなん?」

「あぁ、男どもが可愛いっつてる女でしょう?
いうて大した事あるかって話よね。ちょっと可愛いくらいでしょう。何で人気あるか全くわからん」

「だよねぇ。あいつさー、イケメンとか金のある男の前ではコロッと態度変わるじゃん。マジできもいよねー
でも男騙されるよね~ああいう一見清純そうに見える女に」

「分かる分かるッ。知ってる、あいつ。営業の井上さん狙いっぽいよ?」

「マジ?井上さん顔だけはいいもんね。でもどうせ遊びじゃん?あいつ合コンとか行きまくってるらしいよ。
ヤリマンじゃん、きゃはは」

「井上さん純粋そうだもんね~騙されて可哀想~。つーか亜由美が井上さん地味に狙っててご愁傷様って感じよね。
まぁ山岡美麗は馬鹿だけど可愛いからねぇ。騙されるわ、ありゃ」


こういう場面にはいつだって遭遇してしまうものだ。

トイレに入って、いつ出て行こうか迷う所だ。

化粧直しでもしているのだろうか、どこの部署か声だけでは分かりやしない。でもどこかで聞いた事があるような声だった。

世間話くらいはした事があるような女子社員だろう。