一生ふたりで食事に行く事はないでしょう。
心の中で毒づきながら、にこりと微笑んだ。
早瀬さんは「その笑顔が可愛いんだよなぁ~」とふざけた事をほざいて、やっと受付前から消えてくれた。
「山岡さんってやっぱりモテるなぁ~。羨ましい。
早瀬さん、わたしの存在なんて見えてないって感じでしたよね」
隣に座る千田ちゃんは、嫌味のない爽やかな笑顔でそう笑い飛ばす。
「別にモテてなんかないわよ。わたしなんて」
「そんな事ないですって!
山岡さんって女性社員からも憧れの的ですもんッ。
可愛いし、仕事は出来るし、それなのに優しいなんて神様って不公平ですよぉ~…」
さらりと人を褒める癖に、この子に嫌味のひとつも感じられないのは何故なんだろう。
わたしは特別にずば抜けて可愛くもないし、仕事も出来るわけではない。ましてや優しくなんて、絶対にない。
それなのにこの子は無邪気に笑って、わたしの良いところを素直に口にする。…わたしは、そんな素直さなんて持ち合わせていない。
どこにでもいるよるようなおかっぱの黒い頭。少しだけふくよかな体。これと言って特徴もないような、平均的より少し低い点数の女。
「そんな事ないよ。千田ちゃんだって可愛いわよ」
口ではそう言っても、心のどこかで彼女を見下している自分がいた。



