資料を片付けていると、ふと一枚の資料を眺める。
プランを立てた資料。
いつか自分の結婚式のプランを立てたい。
でも、今の私にそれはできない。
一度、大きなため息をついてからまた資料を片付ける。
「都築さん、お客様です」
 後輩が私を呼ぶので、駆け足で後輩のところへ行く。
そこには懐かしい姿があった。
「優人さん!」
 そこには私の友人の兄が立っていた。

 昔、私は人見知りだった。
小学生の頃。男子にからかわれて泣きそうになっている私を助けてくれたのが、友人の友美だった。
友美とは仲が良く、今でも時々会っていた。
最近会えていないなと思ったころ、私のところに連絡が入った。
「結婚することになったんだ」
 彼女は幸せそうに言った。羨ましかった。

 優人さんは友美と遊んでいるときいつも優しく遊び相手になってくれていた。
大きくなるにつれ、優人さんとは会う回数も減っていた。
特に優人さんが20歳の時に結婚してから会っていなかった。
優人さんとは9歳離れていたため、もうすでに優人さんは大人の余裕というものが感じられるようになっていた。

 優人さんはいつも笑顔で私を見てくれる。
「久しぶり。里美ちゃん」
「お久しぶりです」
 久々に会うため、少し緊張してしまう私だが優人さんは優しい微笑みでその場を和ませる。
「友美、結婚することになったんですね」
「そうなんだ。可愛い妹だったからちょっと寂しいけどね」
 可愛い妹と普通に言う優人さんを見て、友美は幸せだなと思う。
「それでね、妹の結婚を祝ってサプライズがしたいんだ。だから里美ちゃんに何か案出してもらおうかなって思ったんだけど、連絡先も知らなかったし、妹に頼むのもって思って、前に聞いてたから職場に来ちゃったんだ。ごめんね」
 優人さんの言葉はなんだか全て温かい。
「全然大丈夫です。でも仕事場だとしっかり相談に乗れないので、優人さんが空いてる日に一緒に考えましょう」
 そう言うと、優人さんは少し頭をかいて、微笑んでくれる。
「ありがとう」
 友人の友美の結婚を祝いたいのはもちろん。
さらにその友美にサプライズをしたいという優人さんの気持ちも大事にしたい。
私は引き受けるという選択肢しかなかった。
優人さんと私の予定が合う日を後で連絡して伝えるということになり、連絡先を教えた。
「じゃあ、また次に会う時までに考えておきますね」
「ありがとう。今度は友美と仲のいい息子を連れてくるよ」
 その言葉に少し驚いて目を見開く。
「息子さんいるんでしたっけ」
「うん。里美ちゃん会ったことないよね。今、高3なんだ」
 優人さんの息子がもう高校3年生ということに驚いて、半分理解したようにただ黙ってうなずく。
時の流れは早いものだなと感じる私は年を取ったなと改めて感じる。
 
 優人さんはいつもと変わらず笑顔でその場を去る。
それを見届けてから私は仕事に戻る。
幸せになりたい……
私の心がどこかでそう言っている気がした。