詩帆が小学生になってから 幸輝を保育園に送るのは 佳宏の役目になった。


詩帆と一緒に 学校へ行きたがる幸輝を 
 

「よし。それじゃ今日は パパと保育園に行こう。」

と送ったのが、きっかけだった。
 

「うん。パパ、お着替え袋持って。」


と幸輝は 嬉しそうに 玄関に向かう。
 

「パパ。男同士だよね。」


翌朝も幸輝は そう言って佳宏の手を引く。


二人が どんなことを話しているのか 美咲は微笑んで見送った。
 


後片付けをして 美咲が駅に着くと 佳宏がホームへ歩いてくる。


一人の佳宏を、美咲は 新鮮な思いで見つめた。
 

「どうしたの。」


美咲の姿を見つけると 佳宏は 優しい笑顔で 美咲の隣に立つ。
 

「ううん。佳宏って、案外カッコいいね。」


美咲は正直に言ってみる。



佳宏は照れた顔で美咲を見て、
 

「朝から。止めてよ。」と言った。
 

「佳宏が一人でいるの あんまり 見る機会が無かったから。ちょっと驚いちゃった。」


美咲が笑いながら言うと、


「美咲もね。俺 いままで 毎朝ここで 歩いてくる美咲見て 同じこと思っていたよ。」


佳宏は 少し恥ずかしそうに 美咲を見る。