“迷った時は麻有子 ” と思いながら、美咲は麻有子を訪ねた。

どんよりとした曇り空。

梅雨独特の蒸暑い日。


美咲は 有休を取って、一人で麻有子の家に行く。
 


「美咲、案外元気そうじゃない。」

麻有子は 優しく美咲に笑いかけた。
 

「毎日 朝は戦争よ。でも私 会社に 助けられているわ。」


美咲も明るく笑う。
 

「助けてくれるのは 会社じゃなくて ご主人でしょう。」


麻有子は プッと吹き出して、美咲を見る。
 

「まあね。最近 佳宏のヘルプも だいぶ 上手になってきたわ。」


明るい美咲の表情で、麻有子は 気付いたはず。でも、
 


「美咲 ご主人のこと 好きに戻れた?」


と聞いたのは 美咲に 話すきっかけを作るためだと 美咲は思った。
 

「うん。この前麻有子に会って 私 反省したの。それで 佳宏に謝ったから。」


美咲が 素直に言うと、麻有子は驚いた顔で、
 

「美咲から折れたの?ご主人 驚いたでしょう。」

と言った。
 

「失礼ね。私だって 悪いと思えば 謝るわよ。」

と声を出して 笑ってしまう。


二人で ケラケラ笑った後で、
 


「でも良かった。一緒に暮らすのに 心が離れていたら、すごく辛いと思う。斉藤主任、優しい人だもの。美咲、大事にしないとね。」


と麻有子はしみじみと言った。



思わず、美咲は 素直に頷いてしまう。