「本当は もっと こうして 旅行したかったんだ。」


露天風呂を上がった二人。

テラスの椅子に 腰かけて、外を見ながら 佳宏は言う。
 

「うん。私、すぐに妊娠したからね。でも ハワイに行ったじゃない。」

佳宏と向かい合い 美咲は 静かに答える。
 
「あれは新婚旅行だよ。でも これからは 三人で出かけようね。」

笑いながら言う佳宏。
 


「これからが長いから。一年に一回、旅行しても あと60回は行けるよ。」

美咲が明るく言うと、


「90才過ぎて 俺、車の運転 できるかな。」

佳宏は 楽しそうに笑う。


美咲も一緒に笑いながら、
 
「その時は、詩帆ちゃんに 連れて来てもらおうね。」

と言った。