それからも 美咲は、佳宏への愛を 取り戻せないまま 詩帆と二人の生活を続けた。


少しずつ 物がわかるようになった詩帆は、美咲の喜びだった。
 

季節が 秋になると、美咲は 詩帆をベビーカーに乗せて 散歩する。

マンションのまわりは 緑が多い。

ゆっくり歩いて、時々 ベンチに座って 詩帆を抱き上げる。


外の空気に触れることは 詩帆だけでなく 美咲も 気分転換になった。
 

「何か月ですか。」

同じように、ベビーカーを押した母子に 話しかけられる。
 
「もうすぐ6ヶ月なんです。」

美咲が笑顔で答えると、
 
「うちは8カ月だから。学年は 一つ上になるのかな。」

そんな風に話すことも、美咲は新鮮だった。
 


美咲は 育児休暇が終ったら、仕事に復帰する。

詩帆は、4月から 保育園に入園できることになった。


美咲と二人きりで過ごす詩帆が 少しでも 外に慣れるように、美咲は 積極的に詩帆を 外に連れ出し始めた。