「ねえ 赤ちゃんの名前 どうする?」

美咲が聞くと、佳宏は、
 
「詩帆ってどうかな。ホエムの詩に 帆船の帆。」

と言った。
 

「綺麗な名前。斉藤詩帆。語呂もいいね。」

美咲が 笑顔で頷くと、佳宏は ホッとした顔をした。
 

「俺 絶対 美咲に 駄目出しされると思った。」

と笑う。
 
「佳宏、どうやって決めたの?」

美咲の問いに、
 
「名前の本とか、漢字とか調べて。」

佳宏は 照れた顔で 美咲を見る。
 

「佳宏、センスいいじゃん。」

美咲は 明るく笑う。


佳宏の 嬉しそうな笑顔が、美咲を 幸せにする。


妊娠中の辛さも、出産の苦しみも、美咲は忘れていた。



これから始まる 家族三人の生活に、希望で いっぱいだった。