私のご主人様~ifストーリー~


「琴音さんっ!」

「瀬名さん、 相須さん…」

厳つい顔なのに、今にも涙をこぼしそうなほど潤った目で見つめられる。

「森末のこと、たのんます」

「元気で。ご飯、本当に美味しかったっすよ」

強く握られた手は、彼らの思いの強さその物のように感じる。

森末さんがお前らなと呆れた言葉を出すけれど、その声は少しだけ寂しげだった。

その後も、たくさんの人たちからありがとうと別れのあいさつを交わす。

ようやく広間を出る頃にはすっかり日付を越えていた。

先程まで騒いでいたのが嘘のように、静まり返っている屋敷。すっかり眠りに包まれている。

…まるで、意図して作られているかのようだ。

そう自覚した直後に、気づけば自然と玄関へ足を向けていた。