「ッどういうことだよ、兄貴!!」
不意に響いた声に肩が跳ねる。
声がした方に振り返った直後、奏太さんが奏多さんの胸倉を掴んだ。
「奏太、離せよ」
「嘘だったのかよ!一緒に高認取って、勉強するって!!なんで裏に残るんだよ!?」
「…」
奏多さんと一瞬、視線が重なった。でも、すぐにそらされてしまう。
…まさか、奏多さん。私が裏に行くから、一緒に行こうとしてくれた?
自惚れかもしれない。でも、奏多さんと森末さんが動き出したタイミングは、私と季龍さんが意思を示した後だった。
…可能性は十二分にある。
そして、その推測は奏太さんにも浮かんだのか、奏太さんの視線が向けられる。
「…は?まさか、お姫様が裏に行くから着いていこうって?…ッふざけんな!!!」
奏太さんは奏多さんから手を離すと、足早に広間を出ていってしまった。
奏多さんはまるで何事もなかったように、乱れた服を整えている。


