すぐに庇ってくれようとした奏多さんを一蹴する平沢さんの言葉に、自分が与えられる立場を改めて実感させられる。
“組長の娘”という立場を…。
「まぁ、まだ未成年だ。これから慣れて、せめて嗜める程度にはしねぇとな」
「…お手柔らかにお願いします」
「あ?柔らかじゃ、意味ねぇだろ」
…その通りでした。
平沢さんは、やれやれと言わんばかりだったけど、準備しとけよと一言残すと先に広間を出ていってしまった。
裏社会へ行く人で広間に残っているのは、季龍さん、奏多さん、森末さんと私だけ。
少しぼんやりしていると、足音と共に誰かが飛び付いてきた。
「梨々香ちゃん…」
「…ッことねぇ、今……いままで、ありがとう……」
腰にしっかり回された手は離れなくて。湿った声は、聞くだけでも胸が苦しくなる。


