「あー、ほらほらやめやめ。もう過ぎたことだし。…真っ当に生き続けろよ」
「言われなくても。いつか、あんたらを取締に来る」
「うげぇ、めんどくせぇ」
心底嫌そうに言われた。
大きく息をついた男は、気を取り直したように笑う。
「で、送っててやろうか」
「遠慮します」
「かってぇなぁ。…婚約者と仲良くやれよ」
「ッな、なんで知ってんだ!?」
「近所の幼馴染だろー?子作りもがんばれよー」
「余計な世話だ!!」
こいつ、まじで食えねぇ…。
苦虫を潰したような顔をしていると、男は手をひらひら振りながら去っていく。
男の背に改めて頭を下げる。
顔を上げたとき、もう男の姿はなかった。
前を向く。俺を待っていてくれる人の元へ帰らなくては。
お袋と過ごした日々を思い出しながら、帰り道を進んでいった。


