「お袋、長生きしろよ」
「うん、頑張る。焔も、元気でね」
「あぁ」
最後の別れなんて、考えられない。軽い挨拶のような別れだ。
お袋も気にしてるのか、そう思っていた。
「焔、もう来ちゃダメだからね」
不意に突きつけられる拒絶。思わず喉の奥が詰まる。
「ここは、ヤクザだから。あなたにとっては、ただ母親に会いに来てるつもりでも、そうは思わない人はたくさんいるから」
「分かってる。もう、二度と会いに来ないよ」
はっきり言葉にするだけなのに、これが本当に今生の別れになるのだと痛感する。
お袋も、笑ったけどその表情は歪んでいた。
「なぁ、お袋。今、幸せか?」
「…………っうん、幸せだよ」
言葉に詰まったのは、俺に遠慮したせい。お袋は、心からの笑顔を浮かべた。


