時間が許す限り、話をした。
空白の時間を埋めるように。
お袋は嬉しそうに話を聞いてくれたし、父親は話こそしなかったが、黙って聞いていた。
「…じゃ、そろそろ」
夕暮れを合図に立ち上がると、ふっとお袋の表情が歪む。
でも、それを隠そうと懸命に笑顔を浮かべた。
「見送るわ」
そう言いながらチラッと父親を見たお袋。父親は、お袋の視線の意図を察し、お袋の体を支えた。
立つのでさえ、支えがいるのか。
お袋の衰弱は、俺の想像よりもずっと重いのかもしれない。
言いかけた言葉を飲み込んで、出口へ向かった。
門構えの外まで出てきてくれたお袋は、父親に掴まったまま。
あまり無理はさせたくない。こんなところで長く留まることもないだろう。


