そんな不安と戦っていると、襖の向こうから声がする。
「親父、季龍です」
その声を、その名前を聞いた瞬間にどうしようもなく高鳴った心臓。
ずっと会いたかった人が、この向こうにいる。そう実感しただけなのに、こんなに高まってしまうなんて。
お父さんが返事をすると、開かれた襖。
まだ、覚悟なんて出来ていないのに。
部屋に入ってきた男性の姿に、知らず知らずのうちに頬を涙が伝った。
「………こと、は?」
「…ッ」
口を開いたと同時に、言葉につまる。言葉の代わりに涙が溢れてきて、なにも言えなくなる。
口を手で押さえたまま、嗚咽を堪えるので精一杯だった。
「季龍、座れ」
「っ…はい」
お父さんだけが冷静で、それがかえって気持ちを落ち着かせた。
何とか深呼吸をして、涙を拭う。顔をあげると、お父さんは鼻で笑ったような気がした。


