「誰に手、上げてんだ。クソ女」
「っひ…」
「心結くん、怪我させちゃダメだよ」
「ッチ」
あらあら、言葉も悪い。
心結くんの怒気に当てられた女は、手を離されたとたんへなへなとその場に崩れ落ちてしまった。
そんな女たちをもう、目にすら入れていないだろう心結くんと森末さん。
…おせっかい、だよね。
そうは思っても、彼女たちをこのまま放置するのもと、靴を脱ぎ、屋敷に上がってから振り返った。
「ねぇ、貴方たちはここがどこか分かってる?」
思いの外、自分の声がよく響いた。
土間でへたりこんでいる2人はのろのろと顔を上げて見上げてくる。
「ここは、安易に足を踏み入れていい世界じゃない。間に合うなら、関わらない方が身のためよ」
「ッなに説教タレてんだよ!おばさん!!」
元気を取り戻したみたい。血気盛んな女は、急に怒りを露にして立ち上がる。
でも、そこから踏み込んでくることはなかった。


