私のご主人様~ifストーリー~


森末さんは、いかつい顔に似合わない、泣き出しそうな顔をしながら近づいてくる。

「お久しぶりです。森末さん」

「ッ!!お嬢…琴音さん!!!」

人の間を掻い潜り、おまけに睨み合っていた女の人たちの間も抜けて目の前にやってきた森末さんと、固い握手を交わす。

「琴音さん、おかえりなさい。おかえりなさい」

「男前な顔が台無しですよ、森末さん」

「っはは、それは参りました」

涙を拭った森末さんは、心の底から嬉しそうに笑ってくれた。

「親父に顔を見せに行きましょう。喜びます」

「そうですね。挨拶させてください」

「そんな堅苦しくなくていいですよ。来てください」

周囲の状況をすべて無視して、いや見えなくなっているだけかも。

森末さんの言葉に素直に従おうとした時だった。パシッと空気が裂くような音が耳元でする。

振り返ると、見たこともないような顔で女を睨む心結くんの姿があった。