「相変わらず、まずかった」
「重要なものは血より生気ーエネジィーだろう」
万姫は首筋から垂れる血を気にもせず、
ゆったりと長椅子から立ち上がる。
「生気の方は、流石」
にまりと笑うサジェス。
唇は生々しい血の色で、まるで口紅のようだ。
「怪物として、300年」
「ハッ、サバ読むな」
蔑む様に笑うサジェス。
「3千年だろう」
「主などたったの500年であろう。
そういえば、主のーーブラドの一族は、絶えたのか」
サジェスは枯れた薔薇を踏みつけ、長椅子にどさりと腰を下ろした。
「知らない。逃げてきたから」
「流れ者とは格が違うとでも言わぬばかりだな」
万姫は長椅子の背もたれに軽く腰を下ろし、煙管をふかす。
珍しくサジェスが手を伸ばし、一瞬驚いたように目を丸くした万姫は、煙管をサジェスに手渡した。



