「主ーぬしーは良いな、幾度心臓を失おうとも、再生する」

満足気に笑う万姫に、サジェスはごろりと寝返りをうち、掌ーてのひらーで目を覆う。

「それでいったら、あんただって。
首を切っても死なないじゃないか」

サジェスの言葉に、万姫は乾いた笑い声を響かせ、再び煙管を手に取る。

「そういえば、西洋の怪物など、不死身を豪語しておるものばかりだが、心臓を破壊か、斬首かで儚く散るのう」

蒼い煙が、馬鹿にしたようにサジェスの指に絡んでいく。

鬱陶しそうにそれを払い、むくりとサジェスは起き上がる。

「あんたは何をしたら死ぬんだ?」


「私はーー」

答えかけ、口をつぐむ万姫。

「死んだことがないからわからぬな」


ちっ、とつまらなそうにサジェスは舌打ちをした。

「それはーー不公平だな。
俺なんてあんたのおかげで一月ーひとつきーに一度は必ず死んでる」